浸透させるには
酸性カラーは色素が表面への吸着することで髪を着色するのですが、吸着はイオンの+と-の引き合いです。表面の電荷を強くすることで吸着量を上げるという工夫をして染着効果を上げるよう設計されています。
10分とか30分とかの処理時間で表面だけに吸着します。
しかし、酸性カラーに毛束を37℃で6時間浸しておくと、コルテックスの浅いところくらいまでは浸透します。80℃で8時間くらい置くとコルテックスの中まで色素が浸透します。
別の表現をすると、毛髪内への浸透を表面に電荷の捕囚装置をつければ、30分くらいは十分浸透を防げます。しかし、37℃で6時間ということになると捕囚装置が満タンになって通り抜ける色素があるので内側に浸透していきます。更に80℃になると捕囚効果より浸透するための分子の運動の方が優勢になるのですっかり中まで浸透する、といえそうです。
温度だけではなく、溶剤や㏗を調整すると酸性カラーがキューティクルの内側まで浸透させることができます。
もちろん色素同士を比較すると、分子内での電荷の分布、親油性、親水性のバランスや分子の大きさ、かさ高さなどで入りやすいものと入りにくいものという違いはあります。
酸化染毛剤の場合、アルカリで膨潤させてキューティクルの防御機能を弱めて浸透させるという別の要素が加わります。(浸透は促進される)
もう一つの要素は反応が進むと(1,2剤の混合時から始まる酸化重合という化学反応)染料中間体、モディファイヤーの混合物の中にそれらの2量体、3量体ができ、これらは分子が大きくなっているので浸透が遅くなります。
毛髪内で色素ができる位置(染まりやすい、染まりにくいと大きな関係がある)が変わる原因とすれば、浸透させる位置の調整が可能ということになります。
酸性カラーでは表面の吸着を増強するのと、浸透させるのとでは違う条件が必要です。
- 髪の帯電程度を変える(染液のpH を変えたり、前処理としてのpHコントロール)
- 施術時の温度を調整する(加温する手段はいくつかありますが、結果はずいぶん違うので吟味することが必要)
- 前処理として界面活性をもつものを使う
- 髪を事前に膨潤させる
オイル/ワックス などの性質を使って
- 毛先のコーティング(ポーラスな状態だと先に対処しておかないと色が揃わない)
- 酸性カラー以外の浸透処理(仕上がってからの浸透処理)
酸化染毛剤では
髪に働きかけることとして
- 膨潤の活用(髪に水をかけて濡らすのは膨潤させるには不適)
- 髪の表面にオイル/ワックスや保湿剤などを補うことで、毛髪内の水分量を調整する
- 事前にアルカリや界面活性剤/保湿剤などで処理
染液については
- アルカリ量、過酸化水素量、水分量、染料中間体の濃度などは1,2剤の混合比率によって調整可能
- 染液調製後の時間は染色位置に関係します(リタッチの時の染液を残り5分くらいで毛先にのばす処理を参考に)
上の項目はすべて、事前に十分な検討や検証が必要ですが(今お使いの製品の性質にもよります)面白い結果が得られます。