ヘアカラーの髪への働きかけの強さは損傷に直結するので、染める髪に対してどのくらいの強さが適切かというのは大きなテーマですね。
板に釘を打ち込むのを例に考えてみます。
釘を深く打ち込もうと思えば、ハンマーで打ち込む力を強くする。
これは当たり前みたいですが、一方、日曜大工でくぎを打つとき釘を口に加えて(唾でぬらす)、その釘を使うと打ち込みやすくなるという経験があります。濡れることで板がその部分だけ軟らかくなるんです。(中学校の技術家庭で習いました)
50年以上前の話です。テレビで医事評論家の偉い先生が味噌は大変優れた食品で色々と体に必要な栄養素が含まれていますが、脂肪が少ないので味噌汁に油揚げを入れると良くて、実際おいしくなる、ということでした。何で構成されているかを知ることで初めて分かる長所、短所があるんだ、と小学生の時に気づきました。
今思うに、単品だけで完全を求めるのは難しくても優れたものを軸にして不足分を補ったり、必要な要素を特別に加えたりすれば、優れた単品を超える結果になることもある。ということも付け加えられます。
釘の件から、Eを大きくするか、Rを小さくするかでI(染まり)が大きくなります。強いヘアカラーの仕事を対象となる髪の状態を変えれば比較的弱いものでも代用できます。強さがヘアダメージに関連するとしたら、ダメージを抑えたヘアカラー技術の可能性はあるといえます。私の持論のようなものですが、髪の膨潤をうまく使えば、染まりや色モチに好結果が得られる、MLPというのもこの考え方につながりますが酸性カラーの活用やトリートメントの有効性を上げるなど、更に広い応用があります。
体から分泌される皮脂は皮脂という化合物があるのではなく、何種類もの油脂が絶妙に組み合わさったもので、成分の特性がいろいろな場面で利いて、単一の化合物では考えられない仕事をしてくれます。
ヘアカラーのスペック、髪の状態、ここでは触れていませんがきれいと感じる感性の基準などから、鮮やかな仕上がりで、傷みにくく、次に染めるまできれいでいられるヘアカラーに少しずつ近づいていけるのではないでしょうか。E=IRという考え方を活用することで用いるヘアカラーを決めたり、適切な前処理を選ぶのが簡単になります。